親権者監護権者の変更(判例)

子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって親権者を他の一方に変更することができる(民819条6項)。
親権者の変更は義務の放棄を含むので、親権者の指定と異なり、父母間の単なる協議ではできず、必ず家庭裁判所の審判あるいは調停によらなければならない(家審9条1項乙類7号・17条)。
監護者についても、子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は監護者を変更することができる(民766条2項)。民法と家事審判法によれば、監護者の変更も親権者の変更と同様に、審判と調停による方法しか予定されていないようにも読めるが、監護者は戸籍の記載事項ではなく、また親権者の存在を前提とした監護権のみの問題であるので、父母の協議による変更も有効である。
変更が認められるには、先になされた指定の後の「事情の変更」を要する。

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(離婚又は認知の場合の親権者)
第八百十九条
6  子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる。

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東京高等裁判所平成24年1月12日決定(家庭裁判月報64巻8号60頁)
これに対し,抗告人は,本件決定後未成年者が前記1(6)のとおり診断され,面会交流を中止せざるを得ない事由があり,未成年者が面会交流を拒絶することは 当然であって,これを実施すれば未成年者の病状を悪化させることが考えられるのであるから,抗告人は,未成年者の心身を傷つけてまで面会交流を行う義務を負うもの ではない旨主張するようである。
しかし,債務名義である本件決定は,未成年者が,相手方とは会いたくない旨の意向を表明している事実を前提として,未成年者の年齢,発達段階,忠誠葛藤も見 られるその心情を慎重に検討した上,相手方との面会交流をしないことは,その家族内部の交流に伴う情報の交換を途絶えさせ,中長期的に見ても,未成年者の健全な成 長を図るという観点からも相当とはいえず,面会交流を制限しなければ,未成年者の福祉が害されるとはいえないことなどの理由から,抗告人に対し,このような意向を 表明している未成年者の心身の負担が過大とならない時間間隔と環境下で,本件決定の定める方法によって未成年者と相手方との面会交流を行うことを命じたものである。
そして,第1回ないし第3回の面会交流は抗告人が未成年者に付き添い面会交流中に言葉をかけるなどしており,本件決定の定めた方法によって実施されたものとは認め られない上,抗告人が付き添う方法を採ることで,本件決定が懸念した未成年者の忠誠葛藤をさらに進行させた可能性も否定できないものというべきである。
その上,前 記1(6)判示の診断書の記載も,診断の前提とされた面会交流の実施方法等の事実関係や診断の具体的根拠を明らかにするに足りる資料はないのである。以上判示の各 点を総合すると,前記1(6)判示の診断書の記載をもって,本件決定が定めたとおりの方法で実施した場合に未成年者に与える影響の内容,程度を具体的に立証するに 足りるものではなく,債務名義である本件決定が考慮していない新たな事情が発生したとまでは認めるに足りないし,また,未成年者の年齢,発達段階等を併せ考えれば, 抗告人が本件決定の上記判断を尊重して,親権者として未成年者を指導したとしても,その福祉を害することなく本件決定に表示された債務を履行することができないと までは認めるに足りないのであって,以上判示の点を総合すれば,抗告人の主張する上記の事情から直ちに本件決定に表示された債務が抗告人の意思で履行することがで きない債務であるとか,その履行の強制が許されないとまでは認められず,また,本件申立てが権利濫用に当たるとも認めるには足りず,他に本件申立てを却下すベき事 由を認めるに足りる資料はない。したがって,抗告人の主張は理由がない。
3 そして,債務の履行を確保するためには,債務者である抗告人に対し,原決定主文1項表示の債務を履行しないときは,抗告人が原決定の告知を受けた日以降不履 行1回について8万円を債権者である相手方に支払うべき旨を命じるのが相当であり,その理由は,原決定4頁7行目冒頭から同頁17行目末尾までに記載のとおりであ るので,これを引用する。
4 よって,原決定は相当であり,本件抗告は理由がないからこれを棄却することとし,原決定主文1項の「毎月1回」とあるのは「毎月1回別紙記載の方法により」 の誤りであることが原決定の理由自体から明白であるから,原決定主文1項中「毎月1回」とあるのを「毎月1回別紙記載の方法により」と更正することとし,その旨を 明らかにすることとする。

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静岡地裁浜松支部平成11年12月21日判決(判例時報1713-92)
以上のこと、特に右(二)(2)のことは、被告(母親)とその両親との結びつきが強固であることを意味し、被告が充 分に親離れしないままに未熟な人格として成長したことを示すのであって、別居後の被告の両親の態度等にもそれが見受けら れるのである(原告(父親)が被告の実家を訪れた際、被告の母に鍵をかけられたことなど前記一1(一六)や、被告の父から原告が、 「わしは娘がいなくなり寂しくてしょうがない。」と嘆いたり、「馬鹿野郎、お前なんかに挨拶なんかない。」とか、「帰れ ばいいんだろう、じゃあ帰れ。」と怒鳴られたりしていることにも窺われるのである)。
(2)さらに、別居後の調停等の席上、原告から一郎を遠ざけようとする被告の態度(前記一2(二)、(三)、(四))は、 社会人として成長した暁には人格として備わっていなくてはならない二つの特性、すなわち、人間の母性原理の他、父性原理 を一郎自身が学習すべき絶好の機会を被告自らが摘み取っている態度というべく、決して讃められた態度ではない。  子供は産まれたときから二親とは別個独立の人格を有し、その者固有の精神的世界を有し、固有の人生を歩むというべく、 決して、母親たる被告の所有物ではないのである。
(四)以上の他、被告の供述はいずれもにわかに措信し難いものがあるといわなければならない。
2 以上のとおり、被告が原告の許を離れて別居するに至ったのは、本件調停の経過や調停離婚成立の過程を併せ考慮すれば、 決して原告が自己本位でわがままであるからというのではなく、むしろ、被告の親離れしない幼稚な人格が、家庭というもの の本質を弁えず、子の監護養育にも深く考えることなく、自己のわがままでしたことであって、そのわがままな態度を原告に 責任転嫁しているものという他はなく、右被告の別居に至る経過が今回の面接交渉拒否の遠因となるとする被告の主張は到底 採るを得ない。
四 なお、学資保険の未払保険料金30万円の支払は、必ず被告の預金口座に振り込むことが条件であったと、被告は主張す るが、これとても《証拠略》によってもこれを認めるに足りず、そもそも被告が満期返戻金を受領する際に贈与税または一時 所得による所得税が課税されるとしても、せいぜい10パーセント内外の経済的負担を被告が一時的に負うにすぎないものと いうべく、到底父性原理の習得という重大な人間的価値と比較すれば、被告の右主張は採るに足りない言いがかりという他は ない。
第四、以上のとおりであるとすれば、被告が原告に対して一郎との面接交渉を拒否したことは、親権が停止されているとはい え、原告の親としての愛情に基く自然の権利を、子たる一郎の福祉に反する特段の事情もないのに、ことさらに妨害したとい うことかできるのであって、前項で検討した諸事情を考慮すれば、その妨害に至る経緯、期間、被告の態度などからして、原告 の精神的苦痛を慰謝するには金500万円が相当である。

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大阪高等裁判所平成19年6月7日決定
しかしながら,本件調停の面接交渉に関する調停条項(第5項)を全体としてみれば,面接の頻度,時間,面接日,面接の方法につ いて具体的かつ明確に規定されており,給付条項として合意されたものであることは明らかである。
また,その給付内容は,幅のある ものであるが,原審判発令までの経緯(前記1(3))に照らせば,上記調停条項に従って,原審判主文のとおり間接強制を命じるの に問題はない。

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岡山家庭裁判所津山支部平成20年9月18日決定
面接交渉が不履行の場合における間接強制金の支払額は,債務者の拒否的な姿勢のみを重視するのではなく,債務者の現在置かれている経済的状況や1回あたりの面接交渉が不履行の場合に債権者に生じると予測される交通費等の経済的損失などを中心に算定するのが相当であり,本件における諸事情を総合考慮すれば,不履行1回につき5万円の限度で定めるのが相当である。

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